先日、あるマーケットで、背中を丸め・・・腰の曲がってる一人の老人を見かけた。
休憩用の椅子にすわり、マーケットでペットボトルのお茶と、ビスケットを買ったんだろうね。
それを食べてたよ。
くしゃくしゃのビニール袋を持って、ビスケットがボロボロとこぼれないよう、
食べかすを受け止めていた。
きっと公共の場を汚さないような配慮なんだろうね。
俺のオジサンに似てる。
顔が似てるんじゃなくて、雰囲気。
グレーのワイシャツを、タックの入った、昔のスラックスにギュウギュウ押し込んで・・・
とにかく目立たない。
なんとなく、旋盤工かな? と思った。
俺のオジサンに似てるから。
旋盤工は、目立たない仕事。
でも、昭和30年代の旋盤工がいなければ、今の「日本」もないだろうな。
それほど、当時の職人は「日本」に貢献していたんだと思うよ。
水道を捻ると水が出てくる。
オジサン、よく言ってた。
「川口の職人たちが、水道管を作ってた」って。
鋳物の水道管のこと。
それを加工していた。
国のためにやってたんだね、仕事を。
仕事が好きだったな、オジサン。
儲かっても、うまいモン食うわけでもなく、
儲かっても、うまい酒呑むわけでもなく、
全部、機械とドリルなんかに消えたって。
その機械とドリルが今うちにある。
椅子に座ったオジサンは、ゴミを片付けると、
杖をついて立ち上がり、何も言わず歩いていった。
もう、きっと、今の日本には必要無い人なんだろうな。
ゲンパツ直す人とか、経済を立て直す人とか、
そういうのをどうにかできる人が必要なんだろうな。
本当に、もう、オジサンは今の日本にはいらないのかな。
帰りがけ、歩いていたら、オジサンに追いついた。
声をかけようかと思って、オジサンを追い越して振り返ってみた。
オジサンの杖をつく、右手の人差し指が無かった。
ぼくのオジサンも、人差し指、無かった。
月月火水木金金、高度成長期に朝から晩まで「仕事」をがんばった末に、
自分と、日本の未来と引き換えに失ったのかな、人差し指。
その無くした指を見た瞬間に、なんか、わかった気がして声をかけるのをやめました。
老兵は死なず?
いやいや、まだまだ教えられることいっぱいあります。現役ですよ。
オジサンの、あなたのその背中は、今でも僕の未来に多大なる影響を与えています。
やる気っつーの? そういうのが出てくるんだよなぁ。
やったるぞぉ ! みたいな・・・
ぼくは誇りに思うよ、オジサン。
Nothing is Told
語らずとも、オジサンの丸まった背中は何か言っているようで・・・
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